「麦秋」感想

  • 阿王 陽子
  • 2022/07/31 (Sun) 18:41:28
「東京物語」が薄れゆく家族の絆と悲哀、「晩春」が父と娘の離れがたい愛情と結婚について、をテーマにしているなら、この「麦秋」は、家族の団らんと結婚問題、家族の別れをテーマにしている。

笠智衆は本作では紀子(原節子)の兄、康一を演じている。髪が黒いので若く見える!

「麦秋」の紀子は28歳。未婚で、嫁に行くことをもちかけられる。

原節子のタイピングの手元がテキトーな打ち方だったが(笑)、まあ、そこを見る映画ではないから良しとして、原は本作でも抜群に美しかった。また友人役の淡島千景が可愛くて、生き生きとしていた。若い。

ただ、気になったのはやはり現代との違和感だろう。

康一が紀子の結婚相手が40歳なので、28歳の「紀子の年齢では贅沢は言えない」と、言うのだが、なんだか違和感を感じた。

ひとまわり差の夫婦、恋人はざらにいるではないか。現代だとそうでも当時では違ったのかと認識した。

また、女友だちが言う、「未婚者に権利なし」も、いまはセクハラになってしまう禁句であるだろう。

紀子三部作をいっきに観て、笠智衆の老け役、原節子の類まれな美しさが印象深い。
また、「晩春」と「麦秋」は北鎌倉を舞台にしているが、文学的、歴史的な鎌倉のイメージが、小津映画の情感豊かな描写を引き出させている。

三部作で、斉藤高順、伊藤宣二らの、優しくせつない音楽が流れていたが、現代のうるさいBGMと比べて、とても素敵だと感じた。

8月は小津安二郎、黒澤明映画(これも父から借りた)、そして、ロバート・デ・ニーロ(「マイ・インターン」のまとめとして)予定である。
2022.7.31
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