「宗方姉妹」「お茶漬けの味」を観て

  • 阿王 陽子
  • 2022/08/08 (Mon) 19:12:44
小津安二郎をもっと知りたくなり、「宗方姉妹」「お茶漬けの味」を今回も字幕付きで観た。

「宗方姉妹」は田中絹代と高峰秀子が姉妹なのがなかなか年齢差があり対照的で、古風な考え方の田中絹代と現代的なおキャンな高峰秀子、田中絹代の相手役だった上原謙が思われる家具会社の男性役であるのだが、上原謙が未亡人とおそらく深い仲にあったであろう描写があり、田中絹代を思っている一途さが彼からは感じられず、なんだか上原謙が未亡人となってしまった田中絹代にアプローチするのも、しらじらしい感じに感じてしまい、「宗方姉妹」の作品はあまり良さが感じられなかった。また田中絹代の容色の老いが感じられ、あまり魅力を感じる雰囲気ではないのもこの作品が佳作ではない要因であるだろう。生意気な妹の高峰秀子のはつらつさが変に際立つ作品になっていた。私は「宗方姉妹」は失敗だったと感じた。

しかし、「お茶漬けの味」は実に素晴らしかった。インティメートでプリミティブなお茶漬けの味こそ夫婦なんだ、という佐分利信の男の色気と、有閑マダムな木暮実千代のケバケバシイ悪妻から改心して、かわいい妻に変身するラストがなかなか感動的で、観たあとで繰り返し佐分利信と木暮実千代のすれ違いから和解までのお茶漬けを作る展開が、お見合い結婚はこういう展開だったら幸せになれるんだなあと思い、バツイチの私はこの作品を参考に婚活できたら、と思った。

佐分利信という俳優の男の色気あふれる魅力が、この作品を素晴らしいものにしているし、また木暮実千代の見た目のコケットな奔放な妖婦のような雰囲気が悪妻だった前半を際立たせている。この妻は理想的なイメージの原節子ではできない役だっただろう。

実に感激したのが「お茶漬けの味」であった。
2022.8.8
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